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健康コラム

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現代人はどうして冷えているの?

2023.05.10 奴久妻 智代子

現代人はどうして冷えているの?

現代人が抱えるあらゆる心身の不調に対し、その根本的な原因の一つに“冷え”が挙げられます。

人は、寒い時は末梢の血管を収縮させて体内の熱を逃がさないように対応したり、骨格筋を収縮させて熱を産生したりします。逆に暑い時は血管を拡張させて血流を増やし、汗をかいてその蒸散熱によって体を冷やすことにより体温調節を行っていますが、そもそも基本的な体温は、ミトコンドリアがエネルギーを作る過程で生じる熱の70%以上が使われています。

ミトコンドリアはほぼすべての細胞の中にあるエネルギーの産生工場で、呼吸から取込まれ赤血球によって運ばれた酸素と、小腸で消化吸収され血流に乗って届けられる養分を材料にして、エネルギー(ATP:アデノシン三リン酸)を作ります。ミトコンドリアは筋肉や肝臓、心臓、脳などの細胞に多く、特に筋肉を使ったり温めたりすることで活性化し、より多くのエネルギーを作ります。

ところが現代人では、運動不足で筋肉中のミトコンドリアが減ったり、エアコンへの依存で自ら体温調節する機会が失われたり、飽食の時代なのに食生活の偏りで必要な栄養が不足したりする例も多くみられ、浴槽に浸からずシャワーだけですます生活習慣なども相まって、ミトコンドリアの働きが悪くなり、熱を作りにくい体になっています。

また、エネルギーの材料をミトコンドリアに届け、ミトコンドリアで生まれた熱を体の隅々まで運ぶのは血液の流れですが、血流を左右する血管の収縮と拡張は自律神経(アクティブモードの交感神経とリラックスモードの副交感神経)が支配しています。心身のストレスや加齢によって自律神経機能が下がることは昔から知られていますが、現代ではスマホの使い過ぎで若い人や子供にも自律神経の偏りがみられ、自律神経の活動が下がって血流が悪くなると、同様にエネルギー不足、熱運搬不良を招き、体は冷えてきます。

そしてもう一つ注意しなければならないのが、化学ストレスです。入浴タイムに合成化学物質を使ったシャンプーや洗浄剤を使うこと、合成香料や合成色素を含んだ入浴剤に浸かること、そして水道水中の残留塩素も含め、有害物質による化学ストレスが自律神経に深刻な影響を及ぼしていることが明らかになってきています。入浴中に、大面積の皮膚を通して体内に吸収された有害化学物質は、脂肪や骨などに蓄積し、慢性的な化学ストレスを与え続けます。清潔好きな日本人は洗浄剤の使い過ぎでお肌のバリアが崩れている例も多く、また昔の子供が経験してきたような病原体からも遠ざかっているため免疫を鍛える機会も失われ、清潔と隣り合わせの危険に晒されているのです。

現代人に広がる冷えは、現代病です。自然から遠ざかるほど病気は近づくのです。