健康コラム
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人の体は川の流れの様なもの(方丈記)
2023.05.10 奴久妻 智代子
『ゆく河の流れは絶えずして、しかも、元の水にあらず、よどみに浮かぶ泡(うたかた)は、かつ消え、かつ結びて、久しくとどまりたる例なし』と方丈記にあるように、人の体と働きも、また、常に河の流れのごとく動的平衡状態にあり、激しく流れていて、とどまるところを知らないのだと生命工学の福岡伸一博士は説いています。
先生が言うまでもなく、体内は1日170g程度の新たなタンパク質を作り出し組織を交換しながら生きている化学合成工場なのですが、そのためには、常に一定の栄養と酸素を取り込みながら、新たなタンパク質を合成し、細胞を少しづつ入れ替え、臓器を更新しながら、80年、90年の健康や寿命を保っています。
胃や腸などは強力な消化液により自組織も一部消化するため、劣化も激しく、それこそ時間単位、数日で入れ替わり、肌はおよそ1か月、臓器や骨でも、4か月程度、心臓や神経組織を除き、ほぼすべての組織が1年2年で入れ替わっているのです。この入れ替えが、新陳代謝であり、若さと寿命を保つのですが、川の流れのように、よどみなく、栄養酸素が届けられ、新たなタンパク質を合成し組織を入れ替え、細胞の死骸や老廃物を完全に排せつするから、病気もせずに 健康や若さが保たれることになります。
代謝にとってもっとも大事なのはタンパク質合成に必要な栄養・酸素を届け老廃物を回収するインフラ、血流であり、反応をすすめるの体温なのですが、これが加齢や老化によって低下してしまうのが老化です。よって老化とは、この川の流れがよどんでしまうことであり、流れが止まれば、毛細血管はゴースト化し消えてしまうので老化はより加速して起こることになります。
本来血流を流したり、止めたりを支配しているのは自律神経ですが、老化はこの血流を増加させる副交感神経を劣化させ、血流を止める交感神経を高く優位にして、血流を止め体を冷えさせ、同時に血管拡張ホルモン一酸化窒素(NO)の分泌をも低下させてしまうので、流れが止まれば、毛細血管は動脈硬化を起こし、線維化はどんどんゴースト化をすすめ、ますます末端細胞へ、栄養、酸素が届かなくなり、老廃物の排泄も悪くなるから、臓器の入れ替えが遅れ、見た目の組織もより劣化し、老化が進むのです。
若さを保つには、自律神経の副交感神経を優位にし、一酸化窒素の分泌を促し 血流を上げ、毛細血管を蘇らせ体温を上げて代謝を上げることなのですが、その代謝を上げる、簡単でもっとも効率のよい健康法が重炭酸温浴法なのです。
副交感神経に自動的にスイッチが入る41度以下のぬるめのお湯に浸かるだけで、重炭酸イオンが血管に浸透し、体内センサーが、「おや、重炭酸イオンが増えてきた。酸素を急ぎ取り込まないと、血管内のガスバランスがくるってしまう。」と、血管内皮に一酸化窒素NOを分泌させ、一気に血管を拡張し血流を上げてくれます。血流が上がれば、体温が高まり、代謝があがり、組織の入れ替えがよくなり、体の中も外も、生き生きと健康で若くも見えてくるのです。